新規事業の打ち合わせやレビューの場で、
こんな言葉を耳にしたことはないでしょうか。
「方向性自体は合っていると思います」
「大枠では間違っていないですよね」
「細かい調整の問題だと思います」
一見すると前向きで、安心感のあるフレーズです。
実際、誰かを否定する言葉でもありません。
ただ、この言葉が頻繁に出始めた時、
プロジェクトが静かに停滞に入りかけているケースは少なくありません。
よく聞く安心フレーズ
大枠では合っている
「方向性は合っている」という言葉は、
議論を一度落ち着かせる力があります。
・根本的な否定は避けたい
・ここまで進めたことを無駄にしたくない
・一旦、前向きに整理したい
こうした心理が重なり、
「大枠では問題ない」という表現が選ばれます。
言っている本人も、
悪意があるわけではありません。
細かい問題だけという認識
このフレーズとセットで出てきやすいのが、
「残っているのは細かい問題だけ」という認識です。
・UIの調整
・仕様の微修正
・運用ルールの詰め
確かに、個別に見れば些細な話に見えることもあります。
ただ、それらが積み重なると、
「なぜか前に進まない」状態が生まれます。
なぜ危険なのか
検証が止まる
「方向性は合っている」という言葉が強くなるほど、
検証は止まりやすくなります。
・この前提は本当に合っているのか
・別の切り口はないのか
・想定していないズレは起きていないか
こうした問いが、
「もう確認済み」として扱われ始めます。
結果として、
仮説が仮説のまま固定されてしまいます。
前提が疑われなくなる
新規事業の初期フェーズでは、
ほとんどの前提が仮置きです。
・課題設定
・ターゲット
・価値の定義
本来は、
何度も問い直されるべきものです。
しかし「方向性は合っている」と言い切った瞬間、
それらが確定事項のように扱われ始めることがあります。
この状態が続くと、
小さな違和感が見過ごされやすくなります。
方向性と仮説の違い
方向性は仮置き
新規事業における「方向性」は、
完成形ではありません。
あくまで、
今の情報で一旦置いている仮の向きです。
・今はこの方向で進んでみる
・現時点では合理的に見える
・検証前提で進行する
こうした意味合いを含んでいるはずです。
常に検証対象
本来、方向性そのものが
検証対象から外れることはありません。
・進めることで確かめる
・違和感が出たら立ち止まる
・修正する前提で動く
「方向性は合っている」と言う場合も、
「現時点では」という前提が抜けると、
思考が止まりやすくなります。
初期フェーズで問い続けるべきこと
本当に解くべき課題か
方向性が合っているかを確認する上で、
最も基本的な問いはこれです。
「そもそも、この課題を解くべきなのか」
・課題設定は適切か
・優先順位は間違っていないか
・他に先に解くべき点はないか
この問いは、
進んでいる途中ほど出しづらくなります。
だからこそ、
意識的に問い続ける必要があります。
優先順位は合っているか
もうひとつの重要な視点は、
優先順位です。
方向性自体が間違っていなくても、
順番が違うだけで停滞は起こります。
・今やるべきことか
・後回しにしてもよいことか
・判断を先にすべき点は何か
「方向性は合っている」という言葉が出た時ほど、
優先順位を見直す余地があります。
推進役が担う問いの維持
問いを消さない
推進役の重要な役割のひとつは、
「問いを消さないこと」です。
・方向性は仮置きである
・前提はいつでも見直せる
・違和感は論点になり得る
こうしたスタンスを保つことで、
「合っているはず」という言葉が、
思考停止の合図になるのを防げます。
前進と検証を両立させる
問い続けることは、
立ち止まることと同義ではありません。
・進みながら確かめる
・決めながら見直す
・仮置きで前に出る
前進と検証は、
本来セットで進むものです。
推進役は、
その両立を支える役割を担います。
まとめ
「方向性は合っているはず」という言葉は、
安心感を与える一方で、
検証や問いを止めてしまう危険も含んでいます。
それ自体が悪いわけではありません。
ただ、その言葉が増えてきた時は、
一度立ち止まって状況を見直すタイミングかもしれません。
新規事業や新規プロダクトの立ち上げでは、
進め方が定まらないまま立ち止まってしまうことは珍しくありません。
もし「方向性は合っているはずなのに進まない」と感じているなら、
一度、前提や問いを整理してみることも選択肢のひとつです。
それだけでも、
次の一歩が見えやすくなることがあります。
