新規事業の初期フェーズでは、
会議や打ち合わせの中で、こんな言葉がよく出てきます。
「これは後で決めましょう」
「今はまだ判断しなくていいですね」
「もう少し情報が揃ってからで」
一つひとつを見ると、
どれも間違った判断には見えません。
むしろ慎重で、合理的にも感じます。
ただ、気づいたときには
「後でいい判断」が大量に積み上がり、
プロジェクト全体が重くなっている。
この記事では、
その状態がなぜ危険なのかを、
個人ではなく構造の視点から整理していきます。
後回し判断が増える状態
保留事項だらけ
新規事業の現場でよくあるのが、
「決定事項」よりも
「保留事項」の方が多くなっている状態です。
・ターゲットは仮
・価格は未定
・提供範囲も仮置き
・体制は後で調整
一つひとつは小さな判断でも、
数が増えるほど、
プロジェクトは不安定になります。
進行が重くなる
判断を後回しにしている間も、
作業自体は進みます。
資料は作られる。
外注も動き始める。
スケジュールも埋まっていく。
ただし、
「何を前提に進んでいるのか」が曖昧なため、
進めば進むほど、
後で止まりやすくなります。
なぜ後回しにしてしまうのか
情報不足
新規事業では、
十分な情報が揃うことはほとんどありません。
市場データも限定的。
顧客像も仮説段階。
競合の動きも不確実。
そのため、
「今は決めきれない」という感覚が生まれやすくなります。
これは自然な反応です。
問題は、その状態が常態化することです。
決める勇気がない
もう一つの理由は、
判断に伴うリスクです。
決めるということは、
どこかを切り捨てるということでもあります。
・間違っていたらどうしよう
・後から責められたらどうしよう
・修正が大きくなったら困る
こうした不安が、
無意識に判断を先送りさせます。
後回しの積み重ねが生む停滞
一気に詰まる
後回しにした判断は、
消えるわけではありません。
あるタイミングで、
まとめて返ってきます。
・この前提で本当にいいのか
・ここまで進んでいるが、止めるべきか
・どこから修正するのか
その時には、
影響範囲が広がっており、
一気に判断が重くなります。
手戻りが増える
後回しにしていた判断が、
後になって変更されると、
手戻りが発生します。
資料の作り直し。
外注への修正指示。
関係者への再説明。
結果として、
「慎重だったはずなのに、
一番コストがかかっている」
という状態になりがちです。
後回しにしてよい判断・悪い判断
今決めるべきもの
初期フェーズで、
後回しにしない方がよい判断があります。
・進行の前提になるもの
・後工程に影響が大きいもの
・検証の軸になるもの
完璧である必要はありません。
仮置きでも構いません。
「今はこれで進む」と決めることが重要です。
後で取り返せるもの
一方で、
後回しにしても問題になりにくい判断もあります。
・細かな表現
・運用ルールの詳細
・最終的な最適化
これらは、
動きながら調整できます。
すべてを今決める必要はありません。
重要なのは、
どれを後回しにしているかを把握していることです。
推進役が行う仕分け
決めるものを明確に
推進役の役割の一つは、
判断を仕分けることです。
・今決める判断
・仮で置く判断
・意図的に保留する判断
これを言語化するだけで、
プロジェクトの見通しは大きく変わります。
判断が少ないのではなく、
判断の整理がされていないケースは多いです。
保留を管理する
後回しにした判断は、
放置しないことが重要です。
・いつ決めるのか
・何が揃えば決めるのか
・決めなかった場合どうするのか
これを管理することで、
「後でいい」が
「後で決める」に変わります。
まとめ
新規事業で
「この判断は後でいい」が積み上がると、
プロジェクトは静かに重くなっていきます。
それは、
誰かが怠けているからでも、
能力が足りないからでもありません。
情報不足と不安が重なる、
初期フェーズ特有の構造です。
新規事業や新規プロダクトの立ち上げでは、
進め方が定まらないまま立ち止まってしまうことは珍しくありません。
もし「どう進めればいいか分からない」と感じているなら、
一度、状況を整理してみることも選択肢のひとつです。
今すべてを決めなくてもいい。
ただ、
何を後回しにしているのかを
把握しておくだけでも、
次の一歩は踏み出しやすくなります。
少し整理するだけで、
前に進めそうな感触が戻ってくることもあります。
