新規事業で「意見が多すぎる」と進まなくなる理由

新規事業の会議で、
多くの人が積極的に発言している。

視点も鋭い。
指摘も的確。
誰かが間違ったことを言っているわけでもない。

それなのに、
会議が終わると、何も決まっていない。
次に何をするのかも、はっきりしない。

「ちゃんと議論しているはずなのに、なぜか前に進まない」
そんな違和感を抱えたまま、時間だけが過ぎていく。

この状態は、新規事業の初期フェーズでは珍しくありません。
そして多くの場合、個々人の能力や姿勢の問題ではなく、
意見が多くなりやすい構造そのものが影響しています。

目次

意見が活発なはずなのに進まない

みんな正しいことを言う

新規事業の現場では、
経験や立場の異なる人が集まります。

・現場視点の意見
・過去事例からの指摘
・リスクを見据えた懸念
・将来性を重視した提案

どれも間違っていません。
むしろ、どれももっともです。

そのため、
誰かの意見を否定しづらくなります。

結論が出ない

否定されない意見は、自然と積み上がっていきます。
しかし、意見が増えるほど、結論は出にくくなります。

・A案も分かる
・B案も筋が通っている
・C案も捨てがたい

結果として、
「もう少し考えよう」
「今日は決めなくていい」
という着地になりがちです。

議論は充実しているのに、
判断だけが置き去りになります。

なぜ意見過多が起きるのか

判断軸がない

意見が多くなる最大の理由は、
判断軸が共有されていないことです。

・何を最優先にするのか
・今は何を決めるフェーズなのか
・どこまで決められれば十分なのか

これが曖昧なままだと、
意見は「正しさ」で競う形になります。

正しさは比較できません。
そのため、どれも残り続けます。

全員参加型の落とし穴

新規事業では、
関係者全員の意見を聞こうとする場面が増えます。

配慮としては自然です。
ただ、全員参加型の議論には落とし穴があります。

・発言=反映される期待が生まれる
・意見を切ることが難しくなる
・判断が「合意形成」にすり替わる

結果として、
判断するための場が、
意見を出し切るための場に変わってしまいます。

意見と判断の違い

意見は材料

意見は、判断のための材料です。
集めること自体が目的ではありません。

意見が多い状態は、
材料が揃っている状態とも言えます。

ただし、
材料が揃っただけでは、前には進みません。

判断は選択

判断とは、
どれかを選び、他を選ばないと決めることです。

・どの意見を採用するか
・どの意見を今は使わないか
・どこを捨てるか

この選択が行われて、初めて前進が生まれます。

意見が尊重されることと、
すべてが採用されることは、同じではありません。

初期フェーズで必要な整理

採用する意見

初期フェーズでは、
すべての意見を平等に扱う必要はありません。

・今の仮説に合うか
・次の判断に必要か
・検証可能か

こうした視点で、
今使う意見を選びます。

それ以外の意見が間違っているわけではありません。
ただ、今の一歩目には使わない、というだけです。

保留する意見

意見を捨てることに、
抵抗を感じる場合もあります。

その時は、
「保留」という扱いが有効です。

・今は使わない
・別のフェーズで再検討する
・前提が変わったら見る

こうして位置づけることで、
意見を尊重しながら、判断を進めることができます。

推進役が行う取捨選択

意見を減らす

推進役の役割は、
意見をたくさん集めることではありません。

むしろ、
使う意見を減らすことが重要になります。

・論点ごとに整理する
・今の判断に関係ないものを外す
・議論の範囲を絞る

これにより、
判断は現実的なサイズになります。

決断を増やす

意見が減ると、
決断が増えます。

・小さな判断
・仮の判断
・修正前提の判断

初期フェーズでは、
完璧な決断は求められていません。

必要なのは、
次に進める判断です。

推進役は、
その判断ができる環境を整える存在です。

まとめ

新規事業で意見が多すぎる状態は、
一見すると健全に見えます。

しかし、
判断軸や役割が整理されていないと、
意見は前進を止める要因にもなります。

誰かが悪いわけではありません。
議論が真面目で、関与度が高いからこそ起きる構造です。

新規事業や新規プロダクトの立ち上げでは、
進め方が定まらないまま立ち止まってしまうことは珍しくありません。
もし「どう進めればいいか分からない」と感じているなら、
一度、状況を整理してみることも選択肢のひとつです。

意見を減らすことは、
誰かを無視することではありません。
前に進むための整理です。

今の段階でも、整理していい。
そう考えられた時、
次の一歩が少し見えやすくなることがあります。

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