新規事業の立ち上げに関わっていると、
こんな感覚を持つことがあります。
・会議は多いのに、前に進んでいる気がしない
・細かい話はたくさん決まるのに、全体像が見えない
・「それ、今決める必要ある?」と思う議論が続く
誰かがサボっているわけでも、
真剣さが足りないわけでもありません。
むしろ、関わっている人ほど真面目に議論しています。
それでも進まない。
その背景には、新規事業の初期フェーズ特有の構造があります。
議論が細部に寄っていく現象
仕様・表現・ツール選定から入る
新規事業の会議でよく見られるのが、
いきなり細部から議論が始まる状態です。
・画面の文言はどうするか
・どのツールを使うか
・この仕様でユーザーは使いやすいか
一見すると前向きで、
「ちゃんと考えている」議論に見えます。
実務的でもあり、話もしやすい。
ただ、こうした話題が中心になると、
別の問題が起きやすくなります。
本質の議論を避ける空気
細部の議論が増える背景には、
無意識の回避があります。
・この事業は本当にやるべきか
・誰のどんな課題を解くのか
・今は何を検証すべきか
こうした論点は、
正解がなく、責任も重い。
合意を取りにくく、
意見が割れやすい話題です。
結果として、
決めやすい細部の話に議論が寄っていく。
これは、個人の逃げではなく、
組織として起きやすい現象です。
今決める必要がないこと
初期は仮でよい項目
新規事業の初期フェーズでは、
すべてを確定させる必要はありません。
・表現の細かな言い回し
・仕様の完成形
・ツールの最適解
これらは、
動きながら変えていける要素です。
仮置きでも、十分に前に進めます。
にもかかわらず、
初期から詰めすぎると、
決めること自体が目的化します。
後で取り返せる判断
「今決めなくても後で修正できること」と
「今決めないと進めないこと」は、
本来分けて考えられます。
しかし、新規事業では、
この線引きが曖昧になりがちです。
・決めておかないと不安
・後から変えるのは怖い
・曖昧なまま進めたくない
こうした心理が、
必要以上の議論を生みます。
本来決めるべき論点
誰のどんな課題を解くか
初期フェーズで本当に重要なのは、
細部ではありません。
まず必要なのは、
誰の、どんな課題を解こうとしているのか。
ここが曖昧なままでは、
どんな仕様議論も正解がなくなります。
何を検証するか(仮説)
次に重要なのは、
「今、何を確かめたいのか」です。
・この課題は本当に存在するのか
・このアプローチは受け入れられるのか
新規事業は、
最初から完成形を作るものではありません。
仮説を立て、検証する活動です。
誰が決めるか(意思決定)
そして、意外と見落とされがちなのが、
誰が最終的に決めるのかです。
議論が長引く多くのケースで、
決定者が曖昧なまま話が進んでいます。
決める人がいないと、
どんな議論も「検討」で終わります。
優先順位のズレが起きる理由
不確実性が高いほど細部に逃げる
新規事業の初期は、
不確実性が非常に高い状態です。
・市場が見えない
・正解が分からない
・失敗のリスクがある
こうした状況では、
人は無意識に不安を避けようとします。
その結果、
不確実性の低い細部の話に逃げる。
これは自然な反応です。
合意を取りやすい話題に偏る
細かい仕様や表現は、
比較的合意を取りやすい話題です。
・好みの違いで済む
・責任の所在が曖昧
・決めても大きな反発が出にくい
一方で、
事業の軸に関わる話は、
責任と判断が伴います。
組織として無意識に、
安全な議論を選んでしまう。
それが、優先順位のズレを生みます。
PMが議論を整理する意味
論点を減らして決断を増やす
プロジェクト推進の役割に入る
プロダクトマネージャーや推進役の仕事は、
議論を増やすことではありません。
むしろ、
今決めなくていい論点を減らすこと。
そして、
今決めるべき判断に集中させることです。
・これは今決める話か
・これは仮で進めていいか
・この議論のゴールは何か
こうした問いを立てるだけで、
会話の質は変わります。
「今決める/後で決める」を切り分ける
すべてを白黒つける必要はありません。
ただ、切り分けは必要です。
・今決めること
・後で決めること
・今は決めないこと
これが整理されると、
会議は短くなり、
行動が増えます。
新規事業は、
決めない勇気も必要なプロジェクトです。
まとめ
新規事業の立ち上げで、
「決めなくていい議論」が増えていると感じたら、
それは進まないサインかもしれません。
誰かの能力や姿勢の問題ではありません。
不確実性が高い環境で、
組織として起きやすい構造です。
・今決めるべきことは何か
・仮で進めていいことは何か
・誰が決めるのか
この整理をするだけで、
議論は軽くなり、
一歩目が踏み出しやすくなります。
新規事業や新規プロダクトの立ち上げでは、
進め方が定まらないまま立ち止まってしまうことは珍しくありません。
もし「細かい議論ばかりで前に進まない」と感じているなら、
一度、決める必要のある論点だけを整理することも、
選択肢のひとつです。
それだけで、
少し前に進める感触が戻ってくることもあります。
