新規事業の失敗を「担当者の経験不足」にしてはいけない

新規事業が思うように進まず、
途中で止まってしまったり、形にならないまま終わってしまった時。
現場では、こんな言葉が聞こえてくることがあります。

「担当者の経験が足りなかったのではないか」
「もう少しできる人を付けるべきだった」

言葉としては分かりやすく、
一見すると納得感もあります。
しかし、その見方が続くほど、
組織の中で同じことが繰り返されやすくなります。

なぜなら、
多くの新規事業は個人の力量だけで左右される構造ではないからです。
担当者に原因を集約してしまうことで、
本来向き合うべき「仕組みの問題」が見えなくなっていきます。


目次

個人に責任を寄せがちな構図

失敗すると担当者が悪者になる

新規事業は不確実性が高く、
最初から正解が見えていることはほとんどありません。
それでも、結果が出なかった時には、
「誰がやっていたのか」が強く意識されます。

・判断が遅かった
・進め方が甘かった
・調整がうまくなかった

こうした評価は、
いつの間にか「担当者個人の資質」に結び付けられていきます。
しかし、同じ環境・同じ構造で、
別の人が担当していれば、
本当に違う結果になっていたかは分かりません。

組織の安心のためのスケープゴート

個人に原因を集めることは、
組織にとって一種の安心材料になります。

「人の問題だった」
「次はうまくいくはずだ」

そう考えることで、
仕組みや体制を見直さなくて済むからです。
ただ、その安心は一時的なものです。
次の担当者も、同じ状況に置かれ、
同じところで詰まっていきます。


仕組みとしての失敗

役割が曖昧

新規事業が止まりやすい現場では、
役割がはっきりしていないことが多くあります。

・誰が最終判断をするのか
・誰が進行を管理するのか
・誰が調整を引き取るのか

これが曖昧なまま進むと、
担当者は「全部自分でやる」状態になります。
経験が豊富であっても、
負荷は簡単に限界を超えます。

判断ルールがない

判断が必要な場面は、
新規事業では次々に現れます。

・今は進むべきか、止まるべきか
・どこまで検証すれば十分か
・何を優先するか

こうした判断を、
毎回ゼロから考えなければならない状態は、
個人の問題ではなく、設計の問題です。
判断ルールがないままでは、
経験があっても迷いは増えていきます。

支援体制がない

担当者が困った時、
・誰に相談できるのか
・どこまで任せていいのか

この支援体制が曖昧だと、
担当者は判断を抱え込むようになります。
結果として、
進行が遅れ、調整に追われ、
疲弊していきます。


サポートされていない担当者

判断が一人に集中する

新規事業では、
小さな判断の積み重ねが続きます。
その全てが担当者に集中すると、
スピードも質も落ちていきます。

「これを決めていいのか分からない」
「後で責任を問われないだろうか」

こうした迷いは、
経験不足ではなく、
判断を一人に背負わせている構造から生まれます。

調整で消耗する

社内外の関係者が多いほど、
調整は複雑になります。
立場や期待が違う中で、
担当者がすべてを調整し続けるのは、
非常に負荷が高い仕事です。

この状態が続くと、
「考える時間」が削られ、
本来向き合うべき事業の中身から、
徐々に離れていきます。


役割設計の重要性

誰が決め、誰が進めるか

新規事業では、
「決める役割」と「進める役割」を
分けて考えることが重要になります。

・決断を引き取る人
・進行を前に進める人
・現場で手を動かす人

これが整理されているだけで、
担当者の負荷は大きく下がります。
経験の有無に関わらず、
前に進みやすい状態が生まれます。

推進役が必要な理由

推進役は、
何かを代わりにやる人ではありません。

・論点を整理する
・判断が必要な場面を明確にする
・決まったことを次の行動につなげる

こうした役割があることで、
担当者は「孤立しない」状態になります。
結果として、
判断の質も、スピードも安定します。


外部PMという選択肢

担当者の代わりではなく支える

外部のプロダクトマネージャーやPMは、
担当者の仕事を奪う存在ではありません。
むしろ、
担当者が本来の役割に集中できるよう、
周辺を整える立場です。

・進め方の整理
・判断の前提づくり
・関係者間の認識合わせ

こうした部分を補うことで、
担当者の経験不足と見なされていた部分が、
実は「仕組みの不足」だったと気づくこともあります。

仕組み化と推進に入る価値

外部PMが入る価値は、
成果物を作ることではありません。
「どう進めるか」を言語化し、
再現できる形にしていく点にあります。

それにより、
一度止まった新規事業だけでなく、
次の挑戦もしやすくなります。


まとめ

新規事業がうまくいかなかった時、
担当者の経験不足に原因を求めるのは、
自然な反応かもしれません。
しかし、その見方だけでは、
同じことが繰り返されやすくなります。

・役割は整理されていたか
・判断ルールは共有されていたか
・支援する仕組みはあったか

こうした視点で見直すことで、
見え方は大きく変わります。

新規事業や新規プロダクトの立ち上げでは、
進め方が定まらないまま立ち止まってしまうことは珍しくありません。
もし「誰の問題なのか分からない」と感じているなら、
一度、個人ではなく構造として整理してみることも、
選択肢のひとつです。

それだけで、
次の一歩が少し見えやすくなることもあります。

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