新規事業における「スピード重視」が失敗を招くケース

「とにかく早く動こう」
「まず出してから考えよう」
新規事業の立ち上げ初期では、こうした言葉が自然と増えます。

スピード感を持つこと自体は、決して悪いことではありません。
ただ、現場を見ていると
スピードを重視しているつもりが、いつの間にか首を絞めている
そんなプロジェクトも少なくありません。

進んでいるように見える。
でも、なぜか落ち着かない。
後から修正が増え、説明も増え、疲弊していく。

この記事では
「なぜスピード重視が失敗につながることがあるのか」
その構造を整理していきます。

目次

スピード=正義になった時の落とし穴

速さが目的化する

新規事業では、
「遅いこと」が悪とされやすい空気があります。

・競合に先を越されるのでは
・社内で忘れられるのでは
・動いていないと思われるのでは

こうした不安が重なると、
速く進むこと自体が目的になっていきます。

本来は
「何を確かめるために、どこまで進むか」
が重要なはずです。

しかし、
「とにかく次へ」「止まらないこと」
が評価軸になると、判断の質は後回しになります。

不確実性を無視して突っ込む

初期フェーズは、
情報が揃っていないのが前提です。

仮説も粗く、前提も揺らぎやすい。
それにも関わらず、
スピードを優先しすぎると、
不確実性そのものを見ないふりをして進んでしまいます。

・市場の理解が浅いまま仕様を固める
・関係者の合意が曖昧なまま外に出す
・判断基準が整理されないまま実行する

この状態で進むと、
後から必ず調整が必要になります。

早く進めた結果、戻るコスト

手戻りの方が高くつく

「早く出したから学べた」
そう言えるケースもあります。

ただし、
前提が整理されていないままのスピードは、
学習ではなく修正作業を増やします。

・仕様の作り直し
・説明のし直し
・関係者への再調整

これらは、
最初に立ち止まっていれば
避けられた可能性があるものです。

結果として、
早く進んだはずなのに、全体では遅くなる
という状況が生まれます。

関係者の信頼が落ちる

スピード重視の影響は、
作業コストだけではありません。

何度も方針が変わる。
説明が二転三転する。
決まったと思ったことが覆る。

こうした状況が続くと、
関係者の中に
「また変わるのでは」という感覚が残ります。

信頼が下がると、
意思決定はさらに慎重になり、
結果的にスピードも落ちていきます。

止まるべきタイミングの見極め

立ち止まるべき論点とは

すべてで止まる必要はありません。
ただ、止まるべき論点はあります。

たとえば
・誰が最終的に決めるのか
・今回の判断で確定する範囲はどこか
・まだ仮説として扱う部分は何か

これらが曖昧なまま進むと、
後から必ず戻ることになります。

止まることは、
サボることではありません。
進むための準備です。

止まらずに確認する方法

「止まる=スピードが落ちる」
そう感じる人もいます。

ただ、実際には
止まらずに確認する方法もあります。

・論点を短時間で整理する
・判断軸だけを先に共有する
・決定事項と保留事項を分ける

これだけでも、
進み方は大きく変わります。

重要なのは、
確認を“後回し”にしないことです。

初期フェーズに必要な適切な速度

速度はフェーズで変える

新規事業では、
常に同じ速度で進む必要はありません。

構想段階、検証段階、拡張段階。
フェーズが変われば、
求められる速度も変わります。

初期フェーズで重要なのは、
アウトプットの量ではなく、
前提理解の深まりです。

最初は「学習の速度」を上げる

初期フェーズで本当に上げたいのは、
実行の速度ではなく、学習の速度です。

・何が分かっていないのか
・どこにズレがあるのか
・どの仮説が怪しいのか

これを早く把握できるほど、
次の判断は楽になります。

学習の速度が上がると、
結果的に実行の速度も安定します。

前進と暴走の違い

進めながら整える=前進

前進しているプロジェクトは、
進みながら整えています。

・都度、判断を言語化する
・前提が変わったら共有する
・決定の重さを揃える

完全ではなくても、
整え続ける意識があります。

進めっぱなしで崩れる=暴走

一方で、
進めっぱなしのプロジェクトは、
整える時間を取りません。

・決まったことが記録されない
・判断理由が残らない
・役割が曖昧なまま進む

この状態は、
速そうに見えて、実は不安定です。

崩れたときの反動も大きくなります。

まとめ

スピードを重視すること自体は、
新規事業において自然な考え方です。

ただし、
スピードが目的になると、失速の原因になります。

前進と暴走は、紙一重です。
違いを生むのは、
「何を確認しながら進んでいるか」です。

早く進めないことが問題なのではなく、
整えずに進むことが問題になる。
そう捉えると、
今の状況の見え方も少し変わるかもしれません。

新規事業や新規プロダクトの立ち上げでは、
進め方が定まらないまま立ち止まってしまうことは珍しくありません。
もし「どう進めればいいか分からない」と感じているなら、
一度、状況を整理してみることも選択肢のひとつです。

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