新規事業の立ち上げで「優秀な人ほど動けなくなる」理由

新規事業の立ち上げに、
経験豊富で評価も高い人をアサインした。

ロジカルで、リスク管理もできる。
周囲からの信頼も厚い。

それなのに、
なぜかプロジェクトが進まない。
議論は深まるのに、決断は先送りされる。

一方で、
「そこまで考えなくてもいいのでは」と感じる人が
先に動いてしまう場面もある。

この状況に、
違和感を覚えたことはないでしょうか。

この記事では、
新規事業の初期フェーズで起きがちな
「優秀な人ほど動けなくなる」現象を、
個人の資質ではなく、構造の問題として整理します。

目次

優秀な人が慎重になりすぎる現象

リスクを先に見抜いて動けない

優秀な人ほど、
物事の裏側や将来のリスクを想像できます。

市場の不確実性。
社内調整の難しさ。
失敗した場合の影響範囲。

これらが自然と見えてしまうため、
「今はまだ判断材料が足りない」と感じやすい。

結果として、
一歩目を踏み出す前に、
考える時間が長くなります。

これは能力の問題ではありません。
むしろ、思考力が高いからこそ起きる状態です。

期待が高いほど固くなる

新規事業では、
優秀な人ほど期待を背負わされがちです。

「この人なら間違えないだろう」
「失敗しない判断をしてくれるはずだ」

そうした無言の期待は、
本人にとってプレッシャーになります。

期待に応えようとするほど、
軽率な決断を避けようとします。

結果として、
判断が慎重になり、
動きが鈍くなる。

これは、責任感が強い人ほど
陥りやすい構造です。

情報不足と責任の関係

初期は情報が揃わないのが前提

新規事業の立ち上げ初期は、
情報が揃わないのが当たり前です。

市場データも限定的。
ユーザーの反応も仮説段階。
社内の理解も完全ではない。

それでも、
何かを決めて動かなければ、
次の情報は得られません。

しかし優秀な人ほど、
「情報が不十分なまま決めること」に
強い違和感を覚えます。

これが、初期フェーズ特有の
判断の難しさにつながります。

責任の重さが判断を止める

新規事業では、
決断の責任が曖昧になりがちです。

成功した場合は「チームの成果」。
うまくいかなかった場合は
「判断した人」の責任になりやすい。

この構造の中で、
優秀な人ほど責任を正面から受け止めます。

「自分が決めていいのか」
「この判断で誰かに迷惑をかけないか」

そう考えるほど、
決断のハードルは上がります。

結果として、
誰も悪くないのに、
誰も決めない状態が生まれます。

初期フェーズ特有の不安

正解がないことへの恐れ

新規事業の初期には、
明確な正解がありません。

過去の成功事例も、
そのまま使えるとは限らない。

この状況は、
実務経験が豊富な人ほど不安になります。

これまでのキャリアでは、
「正しい判断」を積み重ねて
評価されてきたからです。

正解がない世界では、
自分の強みが活かしにくいと
感じてしまうこともあります。

失敗が許されない空気

組織によっては、
新規事業であっても
失敗に対する許容度が低い場合があります。

表向きは「チャレンジ」と言いながら、
実際には失敗が評価に影響する。

この空気を敏感に察知するのも、
優秀な人の特徴です。

その結果、
「動かない方が安全」という
無意識の判断が働きます。

これは怠慢ではありません。
環境がそうさせているだけです。

判断を前に進める支えの必要性

論点の棚卸しと優先順位付け

優秀な人が動けなくなる場面では、
判断材料が多すぎることがよくあります。

考慮すべき論点が整理されていない。
今決めるべきことと、
後でいいことが混在している。

この状態では、
どれだけ能力が高くても
判断は重くなります。

必要なのは、
答えを出すことではなく、
論点を減らすことです。

「今はここだけ決めればいい」
そう整理されるだけで、
判断の負荷は大きく下がります。

小さく決めて修正する設計

初期フェーズでは、
一度の決断で全てを決める必要はありません。

小さく決めて、
動きながら修正する。

この前提が共有されていないと、
判断は一発勝負になってしまいます。

優秀な人ほど、
一発勝負を避けようとします。

だからこそ、
「後で直せる設計」があることが、
安心材料になります。

PMが果たす安心装置としての役割

判断の負荷を分散する

プロダクトマネージャーや推進役の役割は、
正解を出すことではありません。

判断をしやすい状態をつくることです。

論点を整理し、
選択肢を明確にし、
決断の重さを分散する。

これにより、
優秀な人が本来持っている判断力を
発揮しやすくなります。

進行と合意形成を支える

新規事業では、
判断そのもの以上に、
「進め方」が重要です。

どこまで決めたら次に進むのか。
誰の判断で進行するのか。
どこで立ち止まるのか。

こうした進行設計があるだけで、
個人にかかる心理的負荷は軽くなります。

優秀な人が動けないと感じた時、
問題はその人ではなく、
支える構造が足りていないだけかもしれません。

まとめ

新規事業の立ち上げで、
優秀な人ほど動けなくなるのは珍しいことではありません。

それは能力不足ではなく、
責任感と状況理解があるからこそ起きる現象です。

大切なのは、
誰かを責めることではなく、
判断しやすい環境があるかを見直すことです。

新規事業や新規プロダクトの立ち上げでは、
進め方が定まらないまま立ち止まってしまうことは珍しくありません。
もし「どう進めればいいか分からない」と感じているなら、
一度、状況を整理してみることも選択肢のひとつです。

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