新規事業の立ち上げに関わっていると、
会議や打ち合わせの後に、こんな感覚が残ることがあります。
「話し合ったはずなのに、何も前に進んでいない」
「同じ言葉を使っているのに、なぜか結論がずれる」
「決めたと思ったら、次の会議でまた最初に戻る」
誰かが意図的に反対しているわけではありません。
全員が前に進めたいと思っている。
それでも、なぜか話が噛み合わない。
この違和感は、
新規事業の初期フェーズではとてもよく起きます。
同じ言葉で違う意味を話している
例:ユーザー、MVP、価値、要件
「話が噛み合わない」と感じる場面を丁寧に見ていくと、
実は“言葉そのもの”が原因になっていることがあります。
たとえば、こんな言葉です。
・ユーザー
・MVP
・価値
・要件
どれも新規事業では頻繁に使われます。
一見すると、共通理解があるように見えます。
しかし実際には、
人によって思い浮かべているイメージが違います。
・経営は「将来の主要顧客」をユーザーと呼び
・現場は「最初に検証する対象」をユーザーと考える
・企画側はMVPを「簡易版プロダクト」と捉え
・開発側は「最低限でも品質を担保したもの」と考える
このズレは、
どちらが正しいという話ではありません。
それぞれの前提が違う
問題は、
その違いが言語化されないまま進んでしまうことです。
同じ言葉を使っているため、
「分かり合えているつもり」になりやすい。
その結果、
話は進んでいるように見えるのに、
判断の前提が揃わないままになります。
前提が共有されていない状態
目的の解釈がバラバラ
話が噛み合わない背景には、
目的の解釈が揃っていない状態があります。
・短期的な検証が目的なのか
・中長期の事業化が前提なのか
・社内実績づくりなのか
これらは、
明確に言語化されていないことが多いです。
それぞれが、
「自分の中の正解」を前提に話すため、
議論はすれ違っていきます。
判断軸が揃っていない
目的と同時に、
判断軸も共有されていないケースが多く見られます。
・何を優先するのか
・どこまで許容するのか
・何をもって次に進むのか
判断軸が揃っていないと、
同じ選択肢を見ても評価が分かれます。
結果として、
結論が出ない、または出ても納得感が残らない。
認識ズレが生む停滞
同じ議論を繰り返す
認識がズレたまま進むと、
会議ではこんな現象が起きます。
・前回と同じ話題が出る
・同じ懸念が何度も繰り返される
・議論のレベルが深まらない
参加者は「もう話した」と感じているのに、
実際には前提が違うため、
噛み合わないままループします。
決めたはずが戻る
一度決めたはずのことが、
次のタイミングでひっくり返ることもあります。
これは、
誰かが気まぐれに意見を変えたからではありません。
「自分が想定していた意味と違った」
「そこまで決めたつもりはなかった」
そんな認識の差が、
後から表面化しているだけです。
言語化の重要性
用語と前提を定義する
この状態を抜け出すために必要なのは、
高度なノウハウではありません。
まず必要なのは、
使っている言葉と前提を
一度、言語化してみることです。
・この場で言う「ユーザー」とは誰か
・今のフェーズでのMVPの定義は何か
・今回の議論の目的は何か
完璧な定義である必要はありません。
暫定で構いません。
「今はこういう意味で使っている」
それを共有するだけでも、
議論のズレは大きく減ります。
論点を整理して共有する
同時に、
「今、何を決める議論なのか」を
明確にすることも重要です。
・決定が必要な論点
・検討中の論点
・今日は触れない論点
これを整理することで、
話題が拡散するのを防げます。
PMが担う翻訳役の価値
経営と現場の言葉をつなぐ
新規事業では、
経営と現場が同じ言葉を使いながら、
違う世界を見ていることがよくあります。
プロダクトマネージャーや推進役は、
どちらかの意見を通す存在ではありません。
・経営の意図を現場の言葉に落とす
・現場の実情を経営が判断できる形にする
この「翻訳」ができる存在がいることで、
話は少しずつ噛み合い始めます。
合意形成を前進に変える
合意形成は、
ゴールではなくスタートです。
言葉の意味と前提が揃うと、
合意は行動につながりやすくなります。
・次に何をするのか
・誰がやるのか
・どこまでやるのか
こうした具体が見えることで、
新規事業は少しずつ前に進み始めます。
まとめ
新規事業の立ち上げで
「話が噛み合わない」と感じるとき、
問題は人ではなく構造にあります。
同じ言葉を、
違う意味で使っている。
前提や判断軸が共有されていない。
それだけで、
議論は簡単に停滞します。
だからこそ、
立ち止まって言語化することには価値があります。
新規事業や新規プロダクトの立ち上げでは、
進め方が定まらないまま立ち止まってしまうことは珍しくありません。
もし「何が噛み合っていないのか分からない」と感じているなら、
一度、言葉と前提を整理してみることも選択肢のひとつです。
それだけで、
次の一歩が見えやすくなることがあります。
