新規事業は「熱量が高い人」だけで始めると危険な理由

新規事業や新規プロダクトの立ち上げ初期では、
強い熱量が推進力になる場面が多くあります。

「これはいける」
「今やらないと機会を逃す」
「多少の無理は覚悟で進もう」

こうした前向きな空気が、
最初の一歩を踏み出させることも確かです。

ただ、しばらく進んだあとで、
次のような違和感が出てくることがあります。

走ってはいるが、どこに向かっているのか分からない。
判断が早すぎて、修正が追いつかない。
疲労だけが溜まり、前に進んでいる実感が薄れていく。

この状態は、
誰かの能力不足や姿勢の問題ではありません。
熱量に偏ったチーム構成が生みやすい、構造的な現象です。

この記事では、
なぜ新規事業を「熱量が高い人」だけで始めると危うくなるのかを、
個人評価ではなく、役割とバランスの観点から整理していきます。

目次

熱量だけで進めた失敗例

勢いはあるが止まるケース

熱量が高いチームは、
初動がとても早いです。

決断が速い。
動きも軽い。
反対意見も少ない。

一見すると、理想的な立ち上げに見えます。

ただ、一定期間が過ぎると、
「次に何を決めるべきか」が曖昧になっていきます。

判断が積み重なった結果、
前提がズレていることに後から気づく。
修正しようにも、どこから手を付ければいいか分からない。

勢いで進んだ分、
止まるときの反動も大きくなりがちです。

冷静さを失う瞬間

熱量が高い状態では、
疑問や違和感が後回しにされやすくなります。

「細かいことは後でいい」
「今は止まらないことが大事」

この判断自体は、
初期フェーズでは必要な場面もあります。

ただ、それが続くと、
検討すべき論点まで流されてしまいます。

結果として、
冷静な判断をするタイミングを失い、
後になって大きな見直しが必要になることもあります。

初期フェーズに必要なバランス

推進力と慎重さ

新規事業の初期フェーズでは、
推進力は欠かせません。

ただ、推進力だけでは、
進み続けることは難しくなります。

必要なのは、
「進める力」と「立ち止まる力」の両方です。

立ち止まる力とは、
ブレーキをかけることではありません。
状況を整理し、
次に進むための準備をする力です。

このバランスが取れていると、
スピードを保ったまま、
方向修正がしやすくなります。

感情と判断の切り分け

熱量が高いチームでは、
感情と判断が結びつきやすくなります。

「この案が好きだから」
「ここまでやったから」

こうした感情は自然なものです。
ただ、意思決定の場面では、
感情と判断を切り分ける視点が必要になります。

切り分けができないと、
判断が属人的になり、
後から説明しづらくなります。

冷静な判断役の重要性

ブレーキ役がいないリスク

熱量が高い人ばかりのチームでは、
ブレーキ役が不在になりがちです。

誰も止めない。
止めると空気が悪くなる気がする。
勢いを削ぎたくない。

こうした心理が重なり、
結果として、
誰も疑問を言い出せなくなります。

ブレーキ役は、
否定する人ではありません。
むしろ、
進め続けるために必要な役割です。

判断の質が下がる理由

判断の質は、
情報量だけで決まるものではありません。

どの情報を重視するか。
今は決めなくていいことは何か。
後で修正できる部分はどこか。

こうした整理がないと、
判断は感覚に寄りやすくなります。

冷静な判断役がいることで、
意思決定は再現性を持ちやすくなります。

PMが果たすブレーキの役割

止めるためではなく整える

プロダクトマネージャーや推進役は、
「止める人」と誤解されることがあります。

実際には、
止めるためではなく、
整えるための役割です。

今の判断は何を前提にしているのか。
その前提は検証済みか。
次の判断に影響しないか。

こうした問いを投げることで、
判断の質を保ちます。

進め続けるための制御

制御というと、
スピードを落とす印象を持たれがちです。

ただ、制御がない状態では、
長く走り続けることはできません。

初期フェーズでの制御は、
スピードを維持するためのものです。

熱量を否定せず、
活かしながら進める。
そのための役割が、PMや推進役です。

続く事業にするための視点

短距離走にしない

新規事業は、
短距離走ではありません。

最初の数ヶ月を全力で走り切っても、
その先が続かなければ意味がありません。

熱量だけで走ると、
疲弊が早く訪れます。

最初から、
「続けられるか」という視点を持つことで、
無理のない進め方が見えてきます。

初期から持つべき意識

初期フェーズで大切なのは、
正解を出すことではありません。

判断を積み重ねられる状態を作ることです。

熱量が高い人。
冷静に整理できる人。
進め方を考えられる人。

それぞれの役割が揃っていると、
事業は自然と前に進みやすくなります。

まとめ

新規事業や新規プロダクトの立ち上げでは、
熱量は大きな力になります。

ただ、熱量だけに頼ると、
判断の質や持続性に影響が出ることもあります。

もし今、
「勢いはあるが不安もある」
「止まるタイミングが分からない」
と感じているなら、
それは健全な違和感かもしれません。

新規事業や新規プロダクトの立ち上げでは、
進め方が定まらないまま立ち止まってしまうことは珍しくありません。
もし「どう進めればいいか分からない」と感じているなら、
一度、状況を整理してみることも選択肢のひとつです。

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