新規事業が失速する会社に共通する「最初の期待値設定」

新規事業の立ち上げ直後。
社内の空気は前向きで、期待も高い。
経営からも「これはいけそうだ」「早く形にしたい」という声が上がる。

ところが数か月後、
プロジェクトの勢いが明らかに落ちている。
会議の頻度が減り、判断は慎重になり、
「一度立ち止まろうか」という話が出始める。

よくあるのは、
途中で何か大きな失敗があったわけではないケースです。
外注先が致命的なミスをしたわけでもない。
メンバーのやる気が急になくなったわけでもない。

それでも、新規事業は失速する。

その背景にあることが多いのが、
**立ち上げ初期の「期待値設定」**です。

この記事では、
新規事業が止まりやすい会社に共通する
最初の期待値の置き方について、
個人の問題ではなく構造として整理していきます。

目次

立ち上げ直後に生まれるズレ

経営の期待と現場の現実

新規事業の立ち上げ時、
経営と現場は同じ言葉を使いながら、
違うものを見ていることがあります。

経営側は、
「どれくらいで成果が出るか」
「いつ売上につながるか」を意識します。

一方で現場は、
「そもそも仮説が正しいか」
「何が分かっていないか」を見ています。

どちらも間違いではありません。
ただ、見ている時間軸が違う。

このズレが、
立ち上げ直後から静かに積み上がっていきます。

スタート直後の熱が冷める瞬間

最初の数週間は、
期待と熱量でプロジェクトは動きます。

多少の曖昧さや不確実性も、
「走りながら考えよう」で乗り越えられる。

しかし、
目に見える成果が出ない期間が続くと、
空気が変わります。

「思ったより進んでいないのでは」
「このペースで大丈夫なのか」

こうした言葉が出始めた時、
実は最初の期待値が
現実と噛み合っていなかった可能性があります。

期待値が高すぎることの弊害

初期成果を求めすぎて判断が歪む

新規事業の初期フェーズは、
成果よりも学習が中心になります。

何が違うのか。
どこが想定とズレているのか。
次に試すべきことは何か。

しかし最初の期待値が高すぎると、
この学習プロセスが評価されません。

「結果が出ていない」
「まだ形になっていない」

そうした見方が強まると、
判断は短期的になります。

本来は必要な試行も、
「今はやるべきではない」と見送られ、
結果として前に進めなくなります。

「早く結果」を求めて止まる

一見すると矛盾していますが、
「早く結果を出そう」とするほど、
新規事業は止まりやすくなります。

なぜなら、
結果が出ない状態が続くことを
許容できなくなるからです。

判断が重くなり、
検討の回数が増え、
一歩目が出なくなる。

これは怠慢ではありません。
期待値と現実のギャップが生む、
ごく自然な反応です。

現場と経営の温度差

現場は不確実性を見ている

新規事業の現場にいる人ほど、
不確実性を具体的に感じています。

市場の反応。
ユーザーの使い方。
外注先との認識差。

それらを日々目にしているからこそ、
「慎重にならざるを得ない」状態になります。

この慎重さは、
サボっているわけでも、
やる気がないわけでもありません。

見えている情報量の違いが、
判断スピードの差を生んでいます。

経営は投資対効果を急ぐ

一方で経営は、
全体の投資バランスを見ています。

複数のプロジェクトがある中で、
新規事業にどこまで時間とコストを割くか。

その視点では、
「いつ回収できるのか」が
重要な問いになります。

この問い自体は正しい。
ただ、初期フェーズにその問いを強く当てすぎると、
現場との温度差が広がります。

初期フェーズに必要な現実的ライン

最初は学習コストがかかる前提

新規事業の立ち上げでは、
最初から効率的に進むことは稀です。

仮説を立て、試し、修正する。
この繰り返しには時間がかかります。

ここを「無駄」と捉えるか、
「必要なコスト」と捉えるかで、
プロジェクトの持続性は大きく変わります。

学習に時間がかかる前提を
最初から共有できているか。

これが、失速を防ぐ一つの分かれ目です。

フェーズごとにゴールを分ける

期待値を現実的にする方法の一つは、
ゴールを段階的に分けることです。

立ち上げ直後のゴールは、
売上や利益でなくてもいい。

・仮説が検証できたか
・次に進む判断材料が揃ったか
・続ける価値が見えたか

こうしたゴール設定があるだけで、
「進んでいない」という感覚は和らぎます。

期待値を調整する重要性

期待値は下げるのではなく整える

ここで重要なのは、
期待値を「下げる」ことではありません。

現実に合わせて
整えることです。

期待が高すぎても、
低すぎても、
プロジェクトは歪みます。

今どのフェーズにいて、
何が分かっていて、
何がまだ分かっていないのか。

それを言語化し、
共有することが、期待値調整の本質です。

推進役が担う説明と合意形成

この期待値調整を、
現場だけで行うのは難しい場合があります。

現場は目の前の作業で手一杯。
経営は全体視点で忙しい。

その間に立ち、
状況を整理し、
フェーズごとの意味を説明する役割が必要になります。

推進役やプロダクトマネージャーは、
成果を誇張する存在ではありません。

「今はここにいる」という現在地を
冷静に共有する存在です。

まとめ

新規事業が失速する背景には、
能力不足や努力不足ではなく、
最初の期待値設定のズレが潜んでいることがあります。

立ち上げ直後の熱量が高い時ほど、
現実的なラインを見失いやすい。

だからこそ、
最初に「何を期待するか」を
丁寧に整えることが重要になります。

新規事業や新規プロダクトの立ち上げでは、
進め方が定まらないまま立ち止まってしまうことは珍しくありません。
もし「どう進めればいいか分からない」と感じているなら、
一度、状況を整理してみることも選択肢のひとつです。

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