新規事業の立ち上げに関わっていると、
こんな状態に心当たりはないでしょうか。
・大きな失敗はしていない
・かといって、明確に前に進んでいる感覚もない
・やめる理由もないが、続ける根拠も弱い
会議では「もう少し様子を見よう」という言葉が繰り返され、
プロジェクトは静かに続いていきます。
誰かが止めているわけではありません。
誰かが強く推しているわけでもありません。
それでも、
なぜか終われないまま続いてしまう。
新規事業では、よくある光景です。
この記事では、
なぜ新規事業では「成功条件」よりも先に
撤退条件を決めておいた方がよいのかを、
構造の視点から整理していきます。
撤退がタブーになる背景
失敗扱いされる恐れ
多くの組織では、
「撤退」という言葉にネガティブな印象がついて回ります。
・失敗と見なされるのではないか
・評価が下がるのではないか
・次のチャレンジがしづらくなるのではないか
こうした不安から、
撤退という選択肢そのものが話題に出なくなります。
結果として、
撤退=避けるべきもの
という空気が生まれやすくなります。
撤退=責任問題になりやすい
もうひとつ大きいのが、
責任の所在の問題です。
「誰が始めたのか」
「誰がGOを出したのか」
こうした話に発展しやすいため、
撤退の判断は個人の責任と結びつきやすくなります。
その結果、
誰も「止めよう」と言い出せない状態が生まれます。
ズルズル続くプロジェクトの末路
判断が遅れてコストだけ増える
撤退条件が決まっていないプロジェクトでは、
判断は常に後ろ倒しになります。
・もう少しデータが揃ってから
・次の施策を試してから
・来期の状況を見てから
こうして時間だけが過ぎ、
気づけば当初想定していなかったコストが積み上がります。
一度に大きな投資をしていなくても、
小さなコストが長期間続くことで、
結果的に負担は大きくなります。
組織が疲弊し、次が生まれない
ズルズル続くプロジェクトは、
数字以上に組織を消耗させます。
・担当者は手応えのない業務を続ける
・他の仕事との兼務で疲弊する
・新しい挑戦に手を挙げづらくなる
結果として、
「次の新規事業」が生まれにくくなります。
止められないプロジェクトは、
未来の選択肢を奪う存在にもなり得ます。
撤退条件があることの安心感
進めるために止め方を決める
撤退条件を決めることは、
最初から諦めることではありません。
むしろ逆で、
安心して進めるための前提になります。
・ここまでは試していい
・この条件を超えたら見直す
こうしたラインがあることで、
チームは迷いなく動けるようになります。
「どこまでやっていいのか」が分かっていると、
初期フェーズの不確実性にも向き合いやすくなります。
感情ではなく条件で判断できる
撤退条件がないと、
判断はどうしても感情に引っ張られます。
・ここまでやったのにもったいない
・もう少しで形になりそう
・今止めたら意味がなくなる
こうした感情は自然なものです。
ただ、判断基準としては不安定です。
あらかじめ条件が決まっていれば、
「今は感情ではなく、条件を見る」
という切り替えがしやすくなります。
初期に合意すべきライン
期限・投資上限・検証項目
撤退条件は、
細かく作り込む必要はありません。
初期フェーズで合意しておきたいのは、
次のようなシンプルなラインです。
・いつまで試すのか(期限)
・どこまで投資するのか(上限)
・何が分かれば次に進めるのか(検証項目)
これらは、
成功を約束するものではありません。
あくまで、
判断するための材料です。
継続判断のゲート設計
重要なのは、
「やる/やらない」の二択ではなく、
段階的な判断です。
・継続する
・条件付きで続ける
・一度止める
こうした選択肢を前提にした
ゲートを設けておくことで、
議論は建設的になりやすくなります。
撤退は突然の決断ではなく、
設計された選択肢のひとつになります。
PMが担う区切りの設計
続ける/止めるを言語化する
プロダクトマネージャーや推進役が関わる場合、
重要な役割のひとつが
「区切りを言語化すること」です。
・今は何のフェーズなのか
・次の判断はいつなのか
・判断基準は何なのか
これを明確にするだけで、
撤退の話はタブーではなくなります。
決断を前に進める役割
撤退条件を決めることは、
プロジェクトを終わらせるためではありません。
・続ける判断をしやすくする
・止める判断を個人に背負わせない
・次の一歩につなげる
こうした目的があります。
推進役がいることで、
「決断そのもの」を前に進める環境が整います。
まとめ
新規事業において、
撤退条件を決めることは勇気のいる話題です。
ただ、
撤退条件がないまま進むことは、
常に曖昧な不安を抱え続けることでもあります。
・止められない
・続ける根拠も弱い
・判断が先送りされる
こうした状態を避けるために、
成功よりも先に、止め方を決めておく
という考え方があります。
新規事業や新規プロダクトの立ち上げでは、
進め方が定まらないまま立ち止まってしまうことは珍しくありません。
もし「このまま続けていいのか分からない」と感じているなら、
一度、撤退条件を含めて状況を整理してみることも選択肢のひとつです。
それは、
次の一歩をより納得感のあるものにするための
準備でもあります。
