「決めたはずなのに、また戻る」プロジェクトで起きていること

会議では確かに決まりました。
その場にいた全員が頷き、
「ではこの方向で進めましょう」と話は終わった。

ところが数日後。
別の会議やチャットで、こんな言葉が出てきます。

「やっぱり別案も検討したほうがいいのでは」
「前提が少し違う気がしていて」
「この決定、本当に大丈夫でしたっけ」

気づけば、
同じ議論を最初からやり直している。
「決めたはずなのに、また戻っている」
そんな感覚を持ったことがある人は少なくありません。

この現象は、
誰かが意地悪をしているから起きるわけでも、
優柔不断な人が多いから起きるわけでもありません。
多くの場合、構造的な理由があります。

目次

決定事項がひっくり返る理由

その場では決まった空気だった

会議の場では、
反対意見が出ず、空気も悪くなかった。
「異論はありません」という言葉も聞こえた。

そのため、
決定したという感覚だけが残ります。

ただし、この時点では
「決まった“ように見えた”」だけ、
というケースは珍しくありません。

会議という場では、
強く反対しにくい状況もあります。
時間が押していたり、
上位者がまとめに入ったりすると、
流れに乗ることを選ぶ人もいます。

後から反対が出る典型パターン

会議後に出てくる反対意見は、
多くの場合「急に思いついたもの」ではありません。

実際には、
会議中から違和感はあった。
ただ、その場では言語化できなかった。
もしくは、言い出すタイミングがなかった。

時間を置いて整理した結果、
「やはり気になる点がある」と感じ、
後から声が上がる。

これは自然な反応です。
問題は、
それが毎回“手戻り”として扱われてしまうことです。

なぜ何度も同じ議論をするのか

論点が固定されていない

同じ議論を繰り返すプロジェクトでは、
「何について決めているのか」が
毎回少しずつズレています。

ある会議では方向性の話をしていたのに、
次の会議では手段の話になっている。
さらに次ではリスクの話に戻る。

論点が固定されていないと、
決定の射程も曖昧になります。

その結果、
「そこまでは決めたつもりではなかった」
「その前提で話していなかった」
という認識のズレが生まれます。

前提条件が共有されていない

決定がひっくり返る背景には、
前提条件の共有不足もあります。

・どの情報を事実として扱っているのか
・何がまだ仮説なのか
・今回は何を見送っているのか

こうした前提が言葉になっていないと、
人によって理解が変わります。

同じ「賛成」という言葉でも、
頭の中の前提が違えば、
意味はまったく別のものになります。

合意と納得の違い

反対しない=納得ではない

会議で反対が出なかった。
それは「合意」だったかもしれません。

ただし、
それが「納得」だったとは限りません。

納得とは、
自分の中で理由が整理され、
腹落ちしている状態です。

反対しないことと、
納得していることの間には、
意外と大きな距離があります。

この距離を無視したまま進むと、
後から違和感が再浮上します。

「持ち帰り」が生む再議論

「一度持ち帰ります」という言葉は、
その場の空気を和らげます。

ただ、
持ち帰った結果がどこに戻るのか。
それが整理されていないと、
再議論の入口になります。

持ち帰り=再検討、
という暗黙の理解があると、
決定は常に仮の状態になります。

結果として、
何度決めても確定しないプロジェクトになります。

決定を前提に進めるための整理

決定事項・保留事項・前提の明文化

手戻りが多いプロジェクトでは、
「決定したこと」と
「決めていないこと」が混ざっています。

この混在が、
後戻りを生みます。

・今回は何を決めたのか
・何は保留なのか
・どんな前提に基づいているのか

これらが整理されていないと、
後から見た人ほど混乱します。

文章にすることで、
初めて共通認識になります。

変更ルール(いつ・誰が・どう)の設計

すべての決定が
永久に変わらないわけではありません。

ただし、
「どういう場合に変更するのか」
「誰が判断するのか」
が決まっていないと、
変更は感覚的になります。

変更できる余地があることと、
何度でも戻れることは別です。

この線引きがないと、
決定は常に不安定になります。

PMが担う確認と固定の役割

決めたことを「決まった状態」にする

決定を安定させるために必要なのは、
強いリーダーシップだけではありません。

「決まった」という状態を
構造的につくる役割が必要です。

プロダクトマネージャーや推進役は、
意思決定そのものよりも、
その後の確認を担います。

・これは決定事項か
・前提は何か
・次に影響する点はどこか

それを整理し続けることで、
決定は初めて機能します。

進行と記録で手戻りを減らす

記憶は曖昧になります。
特に、会議が多いプロジェクトほど。

だからこそ、
進行と記録が重要になります。

議事録というより、
「判断のログ」に近いものです。

何を考え、
何を捨て、
何を選んだのか。

それが残っていれば、
戻る必要がある場合でも、
ゼロからの議論にはなりません。

まとめ

「決めたはずなのに戻る」プロジェクトは、
意志が弱いわけでも、
人が悪いわけでもありません。

多くの場合、
合意と納得、
決定と保留、
その境界が曖昧なまま進んでいます。

決定を強くするのではなく、
決定の状態を整理する。

それだけで、
プロジェクトの進み方は変わることがあります。

新規事業や新規プロダクトの立ち上げでは、
進め方が定まらないまま立ち止まってしまうことは珍しくありません。
もし「どう進めればいいか分からない」と感じているなら、
一度、状況を整理してみることも選択肢のひとつです。

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