新規事業の初期フェーズでは、
何度も話し合い、時間をかけて決めたはずのことが、
いつの間にか元に戻っている、という場面がよくあります。
「前はそう決めましたよね?」
「でも今回は例外で…」
「状況が変わったので、いったん無しで」
そのやり取りが繰り返されるうちに、
「決める意味があるのか分からない」
そんな空気が、少しずつ広がっていきます。
この記事では、
決めたことが守られない原因を、
個人の姿勢や意識の問題ではなく、
組織や進め方の構造として整理していきます。
決めたはずなのに形骸化する
いつの間にか戻る
新規事業では、
「まずはこの方針で進めよう」
「今回はこの条件で行く」
といった決定が、頻繁に行われます。
しかし数週間後、
改めて話題に出すと、
その決定が前提になっていない。
「それって確定でしたっけ?」
「仮の話じゃなかったですか?」
決めたはずの内容が、
共有されていない、
もしくは記憶に残っていない状態です。
例外が増える
最初は一つだけだった例外が、
少しずつ増えていきます。
・今回は特別
・このケースだけ
・状況が違うから
例外が重なると、
元の決定が何だったのか分からなくなります。
結果として、
決定は「参考意見」程度の扱いになり、
拘束力を失っていきます。
なぜ守られなくなるのか
決定理由が共有されていない
決定事項だけが伝わり、
「なぜそう決めたのか」が共有されていないと、
納得感は生まれにくくなります。
背景を知らない人から見ると、
その決定は恣意的に見えることもあります。
「今の状況なら、別の選択もあり得るのでは?」
そう感じたとき、
決定は簡単に覆されます。
これは意図的な反発ではなく、
判断材料が不足している状態です。
責任者が不明確
もう一つの理由は、
「誰が守る責任を持つのか」が曖昧なことです。
決めたのは会議。
合意したのは全員。
でも、守る責任者はいない。
この状態では、
誰も違反を指摘できず、
誰も修正を止められません。
結果として、
決定は自然消滅していきます。
守られない決定の弊害
信頼が下がる
決めたことが守られない状態が続くと、
チーム内の信頼は静かに下がっていきます。
「どうせまた変わる」
「今決めても意味がない」
そう感じ始めると、
議論への本気度も下がります。
表面的には穏やかでも、
内側では諦めが積み重なっていきます。
決断が軽くなる
決定が軽く扱われる組織では、
判断そのものの価値が下がります。
・深く考えなくなる
・確認を省略する
・場の空気で決める
結果として、
意思決定の質も落ちていきます。
これは能力の問題ではなく、
決定が機能しない構造の問題です。
初期フェーズで必要な固定
決定事項の明文化
初期フェーズでは特に、
「決めたことを残す」ことが重要です。
難しい資料である必要はありません。
簡単なメモでも構いません。
・何を決めたのか
・いつ決めたのか
・どこまでが適用範囲か
これがあるだけで、
後からの確認が容易になります。
変更ルールの設定
決定は、
永遠に固定されるものではありません。
ただし、
変更のルールがないまま変わると、
混乱が生じます。
・どのタイミングで見直すのか
・誰が変更を提案できるのか
・変更時に何を共有するのか
変更できる前提を置くことで、
決定はむしろ守られやすくなります。
推進役が行う運用設計
決定を運用に落とす
推進役の役割は、
決定を「実務に落とす」ことです。
・タスクに反映されているか
・外注先に伝わっているか
・次の判断の前提になっているか
決定が現場で使われていなければ、
それは存在していないのと同じです。
守られる前提をつくる
守られる決定には、
共通した前提があります。
・理由が共有されている
・責任者が明確
・変更の道筋がある
これらが揃うと、
決定は「扱いやすいもの」になります。
結果として、
無理に守らせなくても、
自然と運用されるようになります。
まとめ
新規事業で
「決めたことが守られない」状態が続くと、
プロジェクトは少しずつ不安定になります。
それは、
誰かがいい加減だからでも、
意識が低いからでもありません。
決定が機能しない構造が、
そこにあるだけです。
新規事業や新規プロダクトの立ち上げでは、
進め方が定まらないまま立ち止まってしまうことは珍しくありません。
もし「どう進めればいいか分からない」と感じているなら、
一度、状況を整理してみることも選択肢のひとつです。
決定を増やすことよりも、
決定がどう扱われているかを見直すだけで、
前に進みやすくなる場合もあります。
少し整理するだけで、
今の状況が言葉になり、
次の一歩が見えやすくなることもあります。
