新規事業が止まる会社ほど「担当者を増やしたがる」理由

新規事業や新規プロダクトの立ち上げに関わっていると、
こんな場面に出くわすことがあります。

進んでいない。
予定していた判断が決まらない。
次の一歩が見えない。

その状況を前にして、
「人が足りないのではないか」
「もう少し体制を厚くしよう」
という話が自然と出てくる。

担当者が増える。
関係者が増える。
ミーティングの参加者も増える。

一見すると、前に進むための前向きな判断に見えます。
けれど実際には、
人を増やしたことで、かえって動きづらくなった、
という感覚を持つ人も少なくありません。

この違和感は、
誰かの判断ミスや経験不足の話ではありません。
新規事業が止まりやすい構造の中で、
とても起こりやすい現象です。

この記事では、
なぜ新規事業が止まる会社ほど「担当者を増やす」という判断に向かいやすいのかを、
個人の資質ではなく、構造の話として整理していきます。

目次

新規事業が止まった時に起きがちな判断

とりあえず人を増やそうとする心理

新規事業が停滞すると、
現場には焦りが生まれます。

「何か手を打たなければいけない」
「このままでは良くない」

そのとき、
最も分かりやすく、すぐに動ける選択肢が
「人を増やすこと」です。

新しい担当者をアサインする。
別部署からメンバーを加える。
外部の協力者を入れる。

人が増えることで、
動いている感覚が生まれます。
取り組んでいるという安心感も得られます。

ただ、この判断は、
進まない原因が「作業量」だと仮定している場合に起こりやすいものです。

忙しさ=前進と勘違いする構造

担当者が増えると、
タスクは確実に増えます。

資料作成。
調査。
打ち合わせ。
報告。

一人ひとりは忙しくなり、
スケジュールも埋まっていきます。

すると、
「これだけ動いているのだから、進んでいるはずだ」
という感覚が生まれます。

しかし、忙しさと前進は必ずしも一致しません。
新規事業の初期フェーズでは、
作業量よりも意思決定の質とスピードが、
進行に大きく影響します。

人を増やしても進まない理由

タスクは増えるが判断は増えない

人を増やすと、
できることは増えます。

ただし、
「決められること」が増えるとは限りません。

判断の権限や基準が整理されていない場合、
新しく加わった人は、
決断ではなく作業を担うことになります。

その結果、
情報や資料は増える一方で、
最終的な判断は以前と同じ場所で止まり続けます。

判断が増えないまま、
判断材料だけが増えていく。
この構造は、停滞を長引かせやすくなります。

調整コストが逆に膨らむ

人が増えるほど、
調整は複雑になります。

認識合わせ。
説明。
合意形成。

一人ひとりにとっては必要なプロセスでも、
全体で見ると、
調整そのものが大きな負荷になります。

特に、
役割や責任の線引きが曖昧なまま人を増やすと、
「誰に何を聞けばいいのか分からない」
「判断がどこに行くのか見えない」
という状態が生まれやすくなります。

役割と責任の不在が生む停滞

担当者はいるが決定者がいない

新規事業が止まっている現場では、
「担当者」は十分にいることが多いです。

それぞれが真面目に動き、
自分の役割を果たしています。

ただ、
最終的に決める人が誰なのか、
どこまでを誰が決めていいのかが曖昧な場合、
判断は宙に浮きます。

担当者が増えるほど、
「誰かが決めるだろう」という空気が強まり、
結果として誰も決めない構造が生まれます。

誰も全体を見ていない状態

個々のタスクは進んでいる。
部分的な議論も深まっている。

それでも全体が前に進まないのは、
全体を横断して見る視点が欠けているからです。

今は何を決める段階なのか。
どこで止まっているのか。
何を決めれば一歩目が動くのか。

この整理がないまま人を増やしても、
プロジェクトの重心は分散するばかりで、
前には進みにくくなります。

推進役が1人いる意味

人数ではなく役割の問題

新規事業が動き出すかどうかは、
人数の問題であることは意外と少ないです。

重要なのは、
「進める役割」が存在しているかどうかです。

推進役とは、
作業をたくさんこなす人ではありません。

判断を整理し、
関係者を調整し、
次に進むための形をつくる人です。

この役割が1人でも明確に存在すると、
プロジェクトの進み方は大きく変わります。

決めて進める存在の重要性

推進役は、
すべてを独断で決める人ではありません。

むしろ、
誰が決めるべきかを明らかにし、
決められる状態を整える存在です。

この役割があることで、
「人を増やす前に、まず何を決めるか」
という視点が生まれます。

初期フェーズで本当に必要な人材

企画でも作業でもない役割

初期フェーズで必要なのは、
優れた企画者や、
作業をこなす人材だけではありません。

それらをつなぎ、
進め方を整える役割が必要になります。

プロダクトマネージャーや推進役は、
まさにこの位置に立つ存在です。

成果物を作る前に、
成果が出る進め方をつくる。
その役割が、初期段階では特に重要になります。

最初に置くべきポジション

人を増やす前に、
役割を見直す。

誰が全体を見ているのか。
誰が判断を整理しているのか。
誰が一歩目を動かす責任を持っているのか。

この問いに答えられないまま人を増やしても、
状況は大きく変わらないことが多いです。

最初に必要なのは、
人数ではなく、
進めるためのポジションかもしれません。

まとめ

新規事業や新規プロダクトが止まったとき、
担当者を増やしたくなるのは自然な反応です。

ただ、その背景には、
作業量ではなく意思決定や役割の問題が隠れていることがあります。

もし今、
「人は増えたのに進まない」
「忙しいのに手応えがない」
と感じているなら、
一度、人数ではなく構造を見直してみる。

それもひとつの選択肢です。

新規事業や新規プロダクトの立ち上げでは、
進め方が定まらないまま立ち止まってしまうことは珍しくありません。
もし「どう進めればいいか分からない」と感じているなら、
一度、状況を整理してみることも選択肢のひとつです。

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